ソーラーパネルからの反射光による影響(光害)

引き続き、太陽光発電所の建設に係る環境影響影響についてですが、今回は、ソーラーパネルからの反射光による影響(いわゆる光害)についてです。

ソーラーパネルからの反射による光害は、発電所の周囲に建物がある場合において生じることがあります。特に、北側に高い建物等がある場合、冬季に当該建物等に対して光害が発生しやすいことが知られています。

太陽の方位が東(90°)または西(270°)より南であれば、パネルからの反射光の角度は太陽の仰角にパネルの斜度を加えたものとなり、東西の地表面より高い方向に向かいます。そのため、発電所の東西にある住宅等に反射光による影響を与える可能性はないものと考えられます。

ソーラーパネルからの反射光の角度(パネルの斜度15°の場合)

一方、太陽の方位が90°または270°より北であれば、パネルからの反射光の角度は太陽の仰角にパネルの斜度を引いたものとなり、低い方向に向かいます。ただし、太陽の仰角がパネルの斜度以下であれば反射は起こりません。また、太陽の仰角が30°以内であれば、反射光は水平以下となります(パネルの斜度15°の場合)。ある発電所における夏至の太陽の方位が90°及び270°にある時の仰角がそれぞれ38.1°及び37.9°の場合、以下に示す太陽の方位及び仰角のときの反射光が光害を及ぼす可能性があることがわかります。

 

太陽光発電システムから発生する電磁界(電磁波)

太陽光発電所の建設にあたっては、電磁界(電磁波)による健康への影響について懸念されることがあります。ここでは、その影響について調査した結果を示します。

1.身のまわりにおける電磁界

電流が流れている電線などのまわりに発生する「電界」と「磁界」の総称を電磁界といいます。なお、電界と磁界が交互に発生しながら空間を伝わっていく波のことを「電磁波」といいます。

我々の身のまわりには、様々な周波数の電磁界が存在しています 。静電磁界は医療機器や鉄道などから、超低周波電磁界は電力設備や家電製品などから、中間周波電磁界はIH 調理器や電子タグ、電子商品監視装置などから、高周波電磁界は携帯電話などの無線機器や携帯電話基地局、TV・ラジオ放送局などから発生しています。超低周波及び中間周波では、健康への影響が懸念されているのは主に磁界となっています。

2.太陽光発電システムから発生する電磁界の特性

太陽光発電システムから発生する磁界について、JET(一般財団法人 電気安全環境研究所)が太陽光発電モジュールから発生する静磁界(0Hz)とパワーコンディショナーから発生する交流磁界(50Hz)の測定を行っています 。それによると、太陽光発電モジュール及びパワーコンディショナーからそれぞれ0.2m離れた位置における磁界の最大実測値は、それぞれ8.33 μT及び7.49 μTとなっています。

3.電磁界の人への健康影響

電磁界の人への健康影響については、世界保健機関(WHO)が以下のような見解を示しています。

静電磁界(MRIなど)については、発がん性の証拠はなく、地磁気の数百倍に相当する強い静磁界に曝露される特殊な状況では、めまいや吐き気といった感覚が生じる場合があるとしています。
低周波電磁界(送電線など)については、「全体として、小児白血病に関連する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではありません」との見解を示しています。また、その他の疾病についての証拠は「小児白血病についての証拠よりもさらに弱い」と結論付けています。
高周波電磁界については、携帯電話基地局など(無線LANを含む)では「携帯電話基地局などからの弱い高周波電磁界が健康への有害な影響を起こすという説得力のある科学的証拠はありません」との見解を示しています。また、携帯電話では、脳腫瘍のリスク上昇との因果関係は確立されていないものの、長期間の使用と脳腫瘍のリスク上昇との関連についてのデータが少ないことから、「携帯電話使用と脳腫瘍リスクのさらなる研究が必要」としています。
国際的なガイドラインの指針値よりも遥かに低いレベルの電磁界曝露により、頭痛や睡眠障害などの不特定の症状が生じるのではないかという、いわゆる「電磁過敏症」について関心が高まっていることについては、「電磁過敏症の症状を電磁界曝露と結び付ける科学的根拠はありません」との見解を示しています。

4.電磁界に係る規制等

国内における電磁界の規制は、電力設備、無線設備、鉄道設備等、発生源を所管する官庁ごとに行われています。送電線などの電力設備については、経済産業省の「電気設備に関する技術基準を定める省令」において、電界及び磁界に関する規制値が定められています。同省令に定められた超低周波磁界の基準値200μT は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP:International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection)の2010 年ガイドラインを採用したものとなっています。
ICNIRP は、1992年5月に国際放射線防護委員会(IRPA:International RadiationProtection Association)によって設立された独立組織であり、電界、磁界、電波、紫外線より波長の長い全ての光、可聴音を除く音波の人体安全性に関して、社会的な配慮を排除して純粋に科学的な立場から安全性を検討し勧告を行うことを任務とした組織です。ICNIRPはIRPAの他、WHO等と協力して活動しています。
前述の太陽光発電システムから発生する静磁界と交流磁界の測定事例(静磁界:8.33 μT(0.2m距離)、交流磁界:7.49 μT(0.2m距離))は、ガイドライン(静磁界では400mT、交流磁界では200μT)と比べると十分に低い値といえます。

5.パワーコンディショナーから発生する電磁界

太陽光発電モジュールから発生する静磁界の大きさは電流に依存しますが、周辺のモジュールからの影響をほとんど受けないため、太陽光発電モジュール全体の規模(総出力)にはほとんど依存しません。自然の静磁界(地磁気)の強さが約46µTであることを考慮すると、太陽光発電モジュールから発生する静磁界は、全く問題のないレベルであるといえます。
一方、パワーコンディショナーから発生する交流磁界は、出力に依存し、電流が大きくなれば交流磁界の大きさも大きくなります。そこで、太陽光発電所における交流磁界の実測を行いました。その結果、最大実測値は60.59µT(パワーコンディショナーから0.2m距離)であり、そこから約35m離れた場所では0.732µT(最大実測値)と大きく減衰していました。この数値は、一般環境中で測定した0.810µT(最大実測値)と同等レベルであることから、パワーコンディショナーから発生する磁界は、距離が離れると大きく減衰し、30m程度離れた場所ではその影響がほとんどなくなるものと推測されます。

ICNIRP2010に準拠した磁界測定器

太陽光発電事業に係る環境影響評価

平成24年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始されたのを契機に、急速に太陽光発電が普及しています。そのうち、発電容量が1MW以上である、いわゆるメガソーラーのような地上設置型の大規模な太陽光発電施設においては、地域の自然環境や生活環境、景観への影響について懸念されるケースも見受けられるようになりました。

面的開発事業に対する環境影響の回避・低減等の事前の環境配慮を求める制度として、自治体の条例に基づく環境影響評価手続があげられます。環境影響評価条例における太陽光発電事業の取扱い状況は、以下のとおりです。

①太陽光発電事業を対象事業に位置付けている自治体:
長野県、神戸市、福岡市(規模要件:いずれも面積
②太陽光発電事業を「電気工作物の新設」等に含めて条例の対象としている自治体:
さいたま市(規模要件:面積)、川崎市・名古屋市(規模要件:出力)
③「開発行為」、「工業団地の造成」等の面開発の一種として対象とすることができる自治体:
41 の自治体(32 道府県、9 市)(規模要件:面積)

出典)「太陽光発電事業の環境保全対策に関する自治体の取組事例集」(平成28年4月、環境省)